CHの天野翔子さんの回より
横からの圧力と隣からの誘惑が、僚の神経を刺激する。
冴羽アパートを突如襲ったプロペラ機が突っ込むという珍事で、寝室はグチャグチャ、薄いシーツ1枚を頼りにパートナー同士寄り添って夜を過ごさざるを得なくなったのだが。
「ちょ…ちょっとぉそんなにくっつかないでよ」
「しかたねーだろうもう」
過剰に警戒する香に、対処しかねる僚。
相棒が安心して眠れるようにといつものようにおちゃらけてみれば、待ってるのは手痛い制裁ばかり。さらには壊れたプロペラ機からの無言のプレッシャーも耐え難い。なんだ俺にどうしろってんだ。
1人あたふたする香をフォローすることを放棄し、たぬき寝入りして視界をシャットアウトする。
壁の穴のせいで冷えはするが、飛行機から与えられる恐怖感はぐっと薄れた。安堵し、ふと、香が静かになったことに気付く。
僚の体が意志とは無関係に傾いた。
―…ッ
呼吸が一瞬乱れたことを、香に気付かれなかっただろうか。ボキの頭の下にあるものは一体なあに??
香の膝枕だとわかっていながら混乱する僚。さっきまでの賑やかさからは想像できない優しい手つきで僚の髪に触れている。
(これは、ちょっと、まずいんでないかい香ちゃん?)
今や僚を脅かすのはプロペラ機ではなく柔らかい太ももの持ち主だった。
唯一もっこりしない女、と公言しているが自分が香に特別な感情を抱いている自覚はある。香が心配するように無理矢理襲いかかるつもりは露ほどもないが、お膳立てされた状況に理性を保つ自信ははっきり言ってない。
ああちくしょう美味しそうなおみ足ちゃん。今すぐにでも撫でまわしたいという気持ちをこらえ、寝たふりを続ける。
普段の2人からは考えられない現在の状況に、今が夢なのか現実なのか判断が怪しくなってきた。もし夢なら、まず頭を撫でる白い手を捕まえて、小さい顔に手を伸ばし…と考え、ハッと我に返る。メーデー!メーデー!この先は危険です。
相変わらず、彼女の柔らかい眼差しは僚に向けられたままである。
ジレンマをかかえたまま完徹を覚悟するまで、もうしばらくかかった。
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(タイトル参考:柴咲コウ/眠らない夜は眠らない夢を)
寝てたはずの僚ちゃんまでげっそりしてるんだもん。想像力働く!働く!