本日もテレビが恋人。
答えがなくても話しかけたくなっちゃうの。
「そんなので痩せたら世話ないわよ」
「絶っっっ対2500円!」
「し、ょ、う、き、ん、女王!…ほら正解!!」
「あら髪切ってる!髪型変えてもキレイね〜」
画面に映るアナウンサーは賛辞の言葉に気付くはずもなく、淀みなくニュースを伝える。デジタル放送になるとこの人の美しさのメッキもはげるのかしら。未だにブラウン管にお世話になってるから確認するすべはないけれど。
政治家の失態とか、ますます悪化する景気とか、どこで誰がどうしたとかなんとかかんとか。ニュースは次々並べられ画面もばらばら移り変わるが、ぼんやりした思考に支配された香の頭の中には入ってこない。番組がCMに切り替わったところでようやく画面に集中する。
夜の工事現場で赤いライトを振る男の子。学生アルバイトだろうか?どうやら彼は道路沿いの弁当屋で働く女の子に恋をしているらしい。そしてお馴染みのフレーズ。
―この想いをCMにして、君を振り向かせたい
「別にCMにする必要はないわよねえ」
確か野球部のマネージャーバージョンもあったはず。あれは可愛かった。これも可愛いけどね。それでもツッコミを入れずにはいられない。
「30秒もいらないわ」
CMにするまでもない。伝えたいのはただ一言。
「好きよ、僚」
独り言でもこういうのは照れくさいわ、なんて、膝に抱いたクッションにほんのり色づいた顔を押しつける。
そうね、だめ押しも必要かしら?
「大好きなのよ」
「知ってるよ」
え!
硬直した香を残し、バタンとリビングの扉が閉まった。
僚がいたの忘れてた!!!
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(タイトル参考:PornoGraffitti/くちびるにうた)
はからずも告白。他の人がいるの忘れてテレビと会話って、あると思います。