(逆転パラレルです)
「香〜〜!!!」
けたたましいを立てて扉を開き、僚がキャッツに飛び込んできた。鬼気迫る目で店中を睨み付ける。そのままテーブルの下までくまなく目を通したものの、成果が得られず大きく舌打ちした。
「…なんなんだお前は」
僚の動きが止まってようやく苦情を言えた海坊主に、体当たりするような勢いで僚が詰め寄る。
「海ちゃん!」
「…だから、なんなんだ」
「香は来てないのか?!」
「見ての通りだが」
店内は閑古鳥が鳴いている。
僚の眉間にいっそう深い皺が刻まれた。
「…香のやつぅぅぅ!一体どこに行ったんだー!!!」
悲壮感が漂う悲鳴を上げるが早いか、入ってきた時以上にドタバタと走り去る。
海坊主の脳裏に台風一過の四文字が過り、深いため息がこぼれた。
「お前たち、いい加減にしろ」
カウンターの下へしかめ面を向けると、返ってきたのは悪びれない笑顔。香だ。
「いやー、ごめんなさいね海坊主さん。かくまってもらえて助かったわ」
先ほどまでの騒々しさと真逆ののほほんとしたテンションに、僚が不憫でならなかった。
「まったく…今回は何をやらかしたんだ?」
「元依頼人へのデートのお誘いメールを僚に誤送信しちゃった」
「…次は何をするんだ?」
「今の依頼人とお風呂でバッタリしちゃうかな」
「…」
次に起こる騒動が今回の比ではないのは明らかだ。鍛え上げた双肩に、ぐったりと疲れがのしかかる。
香の一挙一動に翻弄される僚は、すべて計算尽くだといつ気がつくのだろう。そして、こっちは一体いつまでそれに付き合わされるんだ!
「手を変え品を変えよくやるな」
「だって反応が面白いんだもの」
香がこの困った趣味に、一刻でも早く飽きることを願ってやまない海坊主だった。
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あべこべごっこの設定で、やっとふたつめ。
リアが忙しすぎてしぬる。僚ちゃんで遊ぶ香ちゃんのお話でした。